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手の健康を願うトルコの食事

こんにちは、定住旅行家のERIKOです。トルコの東南部トゥンジェリ県にあるオバジック村の郊外に暮らすトゥレメスさんのお家に滞在しています。トルコは日本の2倍の面積があり、海岸部や内陸部によって食生活も異なるようです。都心部以外の小さな村などでは、家畜を飼い、菜園をして食糧を補っている家庭が多い印象を受けます。トゥレメス家でも牛、羊、鶏などを飼い、チーズやヨーグルトを作って業者に卸しています。

低い丸テーブルで囲むトルコの伝統的な食事スタイル


トルコの朝食「カフヴァルトゥ」は、トルコで1日で一番大切な食事と言ってもいいでしょう。朝ごはんに欠かせないパンもトゥレメス家では自家製。お向かいさんの庭にパンを焼くサチと呼ばれる鉄板があり、そこでサージ(ラバシュ)と呼ばれる薄めのパンを焼いています。このパンをこねるときのテクニックはまさに神業。棒と手を使って、空中で生地をたくみに伸ばしていきます。

オリーブ(黒と緑の2種類)、トマト、きゅうり、蜂蜜、バター、卵は定番の食材としてテーブルに並びます。卵はオムレツの時もあれば、ゆで卵の時もあります。調味料のプルビバル、塩、タイムを食材にかけて自分の好みの味にして食べます。


トゥレメス家の食卓ではイェル・ソフラスィと呼ばれる低い丸テーブルと、キュルスと呼ばれるトルコの伝統的な木製のイスに座って食事をとります。床に座って食べる習慣のある日本人にとっては大きな違和感はないですが、スープなどを食べるとき、お皿を持ち上げず、こぼさず食べることに慣れるまでに苦労しました。


こちらのイス、硬くて変わった形ですわりにくそうに見えますよね?
いざ座ると、中央が凹んでいて座るとお尻が沈み込むようになり、長時間座っていても疲れず、とても安定した座り心地なんです。今は地方へ行っても西洋的なテーブルとイスが主流になっていますが、昔のトルコはきっとこうだったのだと思います。丸テーブルのいいところは椅子さえあれば、食卓を囲む人数を増やせること。また相手との距離が近いのも、コミュニケーションが円滑になります。

シーツのような極薄パンで作るオーブン焼きパイ

トルコはパンの消費量世界一という、パン大国。パンは毎食必ず食卓に登場します。例えその日がお米料理であったとしてもパンを食べます。
パンの種類はいくつかありますが、一般的ななのは、前のブログでも紹介したエキメッキとスィミット。他にも色々なパンがありますが、中でも私が初めてみて驚いたパンがあります。それが「ユフカ」。


どちらがパンで、どちらがクロスか見分けつきますか?正解は左!シーツのように白く薄いパンなのです。ユフカはスーパーなどでも購入できますが、トゥルメ家では自家製で作っていました。破れない程度に薄く生地を伸ばすのが特徴です。


このユフカに、スマッシュしたジャガイモと、トマトピューレ、玉ねぎなどを入れて混ぜた具材を間に挟みんでいき、パイのようになった状態で焼き上げたのが、「パタテスリィボラック」と呼ばれる料理。チーズバージョンもあるそうですが、焼き上がりはパイのようにサクッとしていました。

ヨーグルトドリンク「アイラン」

トルコでは食事の際、「Ayranアイラン」と呼ばれる飲むヨーグルトがよく登場します。ヨーグルトに水と塩を加えてつくるこの飲み物。もったりした感触の飲むヨーグルトとは違い、さらっとした飲み心地でごくごく飲めてしまいます。塩分が含まれているせいか、疲れたときに飲みたくなるような味わい。
市販のものもたくさんありますが、地方では自家製のヨーグルトを使ってつくっていました。使われるミルクも、羊やヤギのものが多かったです。その他、温かいチャイ、コカコーラやファンタもよく飲まれていました。

赤い万能調味料 プルビベル


トルコの家庭で出会った「プルビベル」と呼ばれる赤い調味料。粗挽赤唐辛子フレークと訳されますが、唐辛子のような尖った辛さはありません。しっとりとしていて、スパイス感があり、正直あらゆる食材を美味しくしてしまう魔法の調味料です。これに出会ってしまうと、本当に手放せなくなってしまうくらい病みつきになります。

私はゆで卵を刻んで、そこにオリーブオイル、プルビベル、タイムと塩をかけてパンと一緒に食べるのが好きでした。

トルコ人は手が命

 

トルコ語には日本語の「ごちそうさま」のように使うことばがあります。Elinize saglikエリニゼ・サールックと言うのですが、直訳すると「あなたの手が健康でありますように」と言う意味になります。

トルコに滞在していて感じたのは、主食のパンや食事を直接手を使ってつくることが多いことです。パンは生地から手で捏ね、野菜を切る時もまな板などを使わず、手とナイフで刻んだりします。日本のおにぎりもお母さんが手で握ったものが美味しく感じられるように、熟練した手で捏ねたパンはさらに美味しく感じられます。
そんな作り手に対して、手の健康を願うことが、食事の感謝の伝え方というのは素敵ですよね。
また、トルコでは年長者に対して敬意をあらわす挨拶をするとき、手の甲にキスをする習慣があります。これも手が暮らしを支える元であり、大切なものであると感じているトルコ人の精神が現れているものかもしれません。

「エリニゼ・サールック」というと、必ず相手から「アフィエトーソ」という言葉が返ってきます。これは直訳すると「いい食事」=「召し上がれ」と言う意味になります。
家の食事だけでなく、レストランに行った際もウエイターさんに使うととても喜ばれますよ。

◎食で巡るトルコ