もし、あなたが突然事故などにあって、これまで使えていた体が十分に機能しなくなったら、その状況にどういった気持ちで抱くでしょうか? トラブルや障害というものに対して多くの人は、その事実にマイナスの感情を抱くのではないでしょうか。

イタリア ウンブリア州ペルージャ県のコルチアーノに住む、ルカ・パニキさんはかつて有名なサイクリストでした。ところがある大会に参加中、コース内で走っているはずのない車にはねられ、大きな怪我と障害を負いました。
サイクリストとして多くの功績を残していた彼ですが、本当の彼の素晴らしさが発揮されたのは、事故後の人生でした。彼の生きる姿は、多くの子どもたちや人びとに影響を与え続けています。

                         双子の弟ダビドさんとルカさん

僕が自転車を始めたのは8歳の頃で、叔父や家族の影響でした。家族全員がサイクリストだったので、自転車に乗り始めることは、とても自然なことだったんです。自分の情熱を捧げるものに若い頃に出会えたことはとてもラッキーだと思っています。

23年前にウンブリアで行われた大会で、コース内に侵入してきた車に衝突して、大怪我を負いました。ドイツで手術を行って、幸運にも腕と手の機能は取り戻しましたが、両足が以前のように自由になることはありませんでした。

事故に遭った次の日、本来なら落胆してもおかしくない状況ですが、僕は新しいシチュエーションに遭遇したと考えて、この状況で何か出来ることを探し始めました。
スポーツ選手というのは、常に新しい状況や困難に遭遇しながら競技しています。前向きにならなければ、スポーツを続けていくことは難しいのです。
僕にはその精神が身についていましたから、自分に起こった出来事を新しい状況だと捉えることができたんです。なので翌日から前向きな気持ちでいられて、新しいことをやろうという気力が湧き上がって来ました。

スポーツ選手の中には、自分には力がある、抜きん出た才能があると、自分の力を信じて、その力を勝ち負けの土俵に晒しながら競技する人もいます。僕の場合は勝利することではなく、経験することを最も大切にしているので、この価値観も事故に遭った後に、ひどく落ち込まなかった理由の1つだと思います。

Fabio Casartelliファビオカサルテッリという、バルセロナオリンピックで金メダルを獲得したりしていた、有名なサイクリストがいたんです。彼は、ツールドフランスのレース中に落車して亡くなりました。彼の家族とは今でも親しくしていますが、彼らと会う度に、命があるということは、何かを語ることが出来ることで、障害を持ちながらも自分自身が生きる価値を毎回感じさせられます。

                         タンゴにも挑戦するルカさん

現在は、様々な自治体や団体と一緒にプロジェクトをやったり、タンゴを踊ることに挑戦したり、僕のような障害者へ向けていろんなことに取り組んでいます。
本当に毎日エネルギーに溢れた充実した日々を送っています。日々問題や障害、いろんなことがありますが、すでに障害を持っていることが、他のいろんな障害を乗り越えやすくなるなと感じるのです。

学校で子どもたちに話をする時は、心のブロックをどう取り除くかということをメッセージとして伝えています。
子どもだけではなく、人はみんなそうですが、心の中に様々なブロックがかかっていて、実際に何かをする前に心が多くのことを制御してしまうんです。

僕の観点ですが、自分が情熱を捧げるものを見つけると、自分はその中で主人公になれます。そうすると、自分が苦手でできないと思っていることも、情熱を捧げられることの中では受け入れられたり、挑戦できたりするんです。
それは人間が生き甲斐をつくっていく上でとても大切なことだと思っています。