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ポルトガル中部地方 若者たちの地域おこし

  • 10.14.2022
  • ポルトガル Portugal
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こんにちは、定住旅行家のERIKOです。ポルトガル中部地方、ベイラ・バイシャ州のにある、カステロ・ノーヴォ村に定住しています。

ポルトガルは2022年のSDGs達成度ランキングでは、163カ国中20位(日本は19位)と、先進国の中では決して高いとは言えないものの、前年比27位からは急速に上がってきています。ランキングでは日本より達成度は低いけれど、生活の中でプラスティックの使用を避けたり、環境問題がよく話題となったりと、国民一人一人の意識は高いという実感があります。
ポルトガル中部地方では、サステイナブルを第一に考慮した若者たちによる地域おこしが活発化しています。

「ポルトガル12の村プロジェクト」


1995年、ポルトガル政府は「ポルトガル12の歴史村プロジェクト」と題した、中部地方にある歴史的な村々の景観・文化保存、観光誘致、文化継承を目的としたプロジェクトを立ち上げました。選ばれた村は、ベイラバイシャ州に点在する、カステロ・ロドリゴ、アルメイダ、カステロ・メンド、ソルテーリャ、モンサント、イダニャ・ア・ベーリャ、カステロ・ノーボ、ピオダオ、ベルモンテ、リニャレス・ダ・ベイラ、トランコソ、マリアルバ。現在、この村々を中心に、インフラ整備、アプリの開発、フリーwifiの設置、文化継承プロジェクトなどが活発に行われています。

移動手段に無料で使用できるエコカーを導入


ポルトガル中部地方はリスボンやポルトなどの観光都市と違い、まだまだ観光インフラが未開発の地域です。観光地までの公共交通機関を使ったアクセスインフラもその一つ。そこで「ポルトガル12の歴史村プロジェクト」では、現地の居住者を含めたすべての人が利用できるエコカーを導入しました。ポルトガル12の村観光開発機構とフランスの自動車メーカーRenaultの提供で、10台がカルテロ・ノーヴォ村に常駐されています。
電気自動はご存知の通り、CO2の削減、騒音や振動抑えることはもちろん、自然災害時には非常電源としても利用することが可能です。


こちらは免許なしでも運転ができるミニカー

ヨーロッパ諸国からの観光客は、マイカーで旅をしていることが多いですが、それ以外の地域からの観光客にはとても便利なサービスと言えます。ちなみに自動車はいくら使っても料金はかかりません。

パンフレットのデジタル化


「ポルトガル12の歴史村プロジェクト」に指定された村々には、さまざまなインフラ設備も完備されました。歩道を石畳からバリアフリー対応に舗装、ATMを設置などです。サステイナブルな観点からは、それぞれの村に常備していた観光パンフレットをすべてペーパーレス化し、アプリに集約したことです。村全体で使えるフリーwifiを設置し、村に滞在中はいつでもネットにアクセスできる環境になりました。


アプリをダウンロードすると、村の詳しい地図が表示され、場所や文化財をクリックすると、その情報が出てきます。また、オーディオガイドにも対応しており、言語も数種類の中から選択することが可能です。便利な機能としては、事前に自分の興味のあるジャンルを登録しておくと、その場所に近づいた時に携帯に通知がくる仕組みです。これで見逃すことなく観光を楽しむことができます。

欧州グリーンディールに沿った食の文化継承

プロジェクトの中でも私が一番興味をそそられたのは、「ストーリーを伝えるレシピ」(Receitas que Contam Histórias)。12の村々で昔から伝統的に食べられている料理を、その村の代表的レシピとし、それぞれの村の指定されたレストランで食べることができるというもの。ポルトガルの中部地方は、国内でも美味しい料理が多く、ポルトガルを代表する食べ物も多くある地域で、このプロジェクトとの相性は抜群です!


伝統的な羊のミルクでつくったチーズ

「ストーリーを伝えるレシピ」では、ただ地元の食材を使って料理を提供し、それを次世代に継承するだけではなく、欧州グリーンディールの考えに基づいて運用されていることです。

欧州グリーンディールは、EUの新しい成長戦略の一つで、雇用を生み出しながら、排出量の削減を促進し、人びとの幸福と健康を向上させる包括的な提案です。具体的には、2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロにすること、経済成長と資源利用を切り離すことなどを主な目標として掲げています。


フンダオ市で開催されたAgroTech 農業とIT技術を使ったイノベイティブなアイデアが数々発表された

「ストーリーを伝えるレシピ」プロジェクトもこの考えに則り、生産段階から消費が行われています。欧州では地方創生に限らず、大小のあらゆるプロジェクトは、まず環境問題に考慮することが第一であるという認識をとても強く感じます。今年(2022年)の夏は、ヨーロッパ全域の47%に渇水による干ばつ警告が出されました。この影響は農作物の収穫不足や山火事の原因などにつながっています。

ヨーロッパ地域では、日本と比べると、気候変動を日常的に実感する機会が年々増えているように感じます。遅かれ早かれ日本にいずれやってくるであろう、環境変化を遅くならないうちに人びとの意識から変えていくことが大切だと感じています。

◎「ポルトガル震災と独裁、そして近代へ」市ノ瀬敦