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ヨーロッパ唯一の仏教国カルムイク共和国とは?

こんにちは、モデル・定住旅行家のERIKOです。現在定住旅行しているカルムイク共和国は、ヨーロッパで唯一の仏教国です。人口30万人のうち、56%がモンゴル系のカルムイク人、その他44%はロシア人やお隣のチチェン人、ダゲスタン人など多くの民族が住む多民族国家です。私が街にいると、カルムイク人と間違えられて、普通に話しかけられるのは日常茶飯事。この間は、「これは何の仏像?」と白人ロシア人に聞かれました。

どうしてカルムイク共和国を定住先に選んだのか?

ロシアには昔2度ロシア語留学していたのですが、2年前に定住旅行で世界で一番寒い村があるサハ共和国のオイミヤコン村に滞在しました。それまで白人のロシア社会しか知らなかった私には、ロシアの文化の多様性は衝撃的で、刺激的でした。

そこからロシアの他の共和国にも興味が沸き、ロシアに詳しいNAトラベルソリューションズの東さん(日本人でロシア国内にここまで詳しい人は東さん以外いないでしょう)に相談したところ、おすすめされたのが、ダゲスタン共和国、カルムイク共和国でした。ダゲスタンはイスラム教、カルムイクは仏教国ということで、とても興味を引かれ、東さんに家族探しと諸々の手配をお願いさせてもらったのです。残念ながらダゲスタン共和国は直前で家族が病気になってしまい、キャンセルになってしまいましたが、念願のカルムイク共和国での定住旅行が実現しました。

カルムイク人はロシア人?

カルムイク人の顔を見ると、我々にそっくりで親近感が湧いてきます。カルムイク人は、西モンゴル族オイラートの一族で、チベット仏教を信仰する遊牧民でした。もともとは現在の中国・新疆ウイグル自治区に住んでいました。清朝の遠征や民族間の内紛を避ける間に、ロシア人とコンタクトを持ち、ロシア領に入ることを許され、現在彼らが居住するボルガ川下流域、カスピ海に住み着くことになったのです。
カルムイク人が持っているパスポートはもちろんロシア国籍のものです。しかし、「我々はモンゴルからやってきたカルムイク人であり、ロシア人ではない」とはっきり言うことからも、彼らの強いアイデンティティを感じます。

遊牧民だったカルムイク人

彼らはその昔「ゲル」と呼ばれるモンゴルなどにある遊牧民の移動式の家に暮らしていました。家畜を飼い、ノマドの生活を送っていたのです。
その暮らしが一変したのはソ連のスターリンの時代。ゲルでの生活も、テングリや仏教の信仰、文化も全てが禁じられました。

現在、カルムイクで唯一昔ながらのノマドの生活を送る、ジュワキンさんとう家族の家を訪問させてもらいました。彼らはモンゴルから移住して来た家族で、遊牧をしながら暮らしています。


300頭を超えるラクダを飼育しながら、ゲルで暮らしています。

 

仏教を信仰する人びと

ロシアには、カルムイク共和国、ブリヤート共和国、トゥヴァ共和国と3つの仏教国が存在しており、カルムイクはロシア国内で一番の仏教人口を誇ります。

エリスタ市内にもたくさんの寺院やストゥーパがあります。また、過去に3回ダライ・ラマが訪問しており、多くの寺院にダライ・ラマの写真やゆかりのものが供えてあります。カルムイクに到着した時、家族が空港で出迎えてくれたのですが、歓迎の印に”ハダク”と呼ばれる袈裟のようなシルクの布を首にかけてくれました。ネパールのシェルパ族の家庭に滞在していた時に、旅へ出かける時同じように袈裟をかけられたのを思い出しました。カルムイクでは主にチベット仏教が信仰されています。

カルムイクに仏教が来たのは、1640年、モンゴルからと言われています。ロシア人でも仏教を信仰している人も多く、寺院で白人が五体投地をしている姿は少し衝撃的でした。ソ連時代は禁じられていた仏教信仰ですが、ゴルバチョフの時代に信仰が再び公認されました。それまで屋内や隠れた場所でお祈りをしていた人たちが、公の場で手を合わせることができた時、みんな恐る恐るしていたと家族が話してくれました。
こちらがお祈りをする時に合わせる手の形。親指を中に折り曲げて、手の中に空気を抱えるようなイメージです。蓮のつぼみの形に似ていると思うのは私だけでしょうか。

                              テングリの儀式が行われる場所。牛乳と石をお供えする。
仏教信仰が広まる前にカルムイク人が信仰していた宗教がテングリ教です。今でもテングリを信仰する人も多く、今年の7月には400kmのテングリの巡礼が行われます。

睡蓮が描かれた国旗

カルムイクの国旗には真ん中に睡蓮のマークが描かれています。これはカルムイクが仏教国であることを示すと同時に、夏に満開となる睡蓮の花を表しています。
またカルムイクのトレードマークとも言われる花はチューリップ。春には草原がチューリップで埋め尽くされます。ヨーロッパや日本で見るチューリップ畑も美しいですが、野生にまだらに咲くチューリップもとても美しいです。

カルムイク語はどんな言葉?

                          縦書きで書かれるトドビチ
カルムイクではもちろんロシア語が話されていますが、それと同時にカルムイク語も話されています。おじいちゃん、おばあちゃん世代のカルムイク人の間ではカルムイク語だけで話すという人もいたり、家では子どもにカルムイク語だけで教育している家庭もあります。

人と会うときの挨拶は、ロシア人もカルムイク人も一貫して、カルムイク語のメンドゥット(こんにちは)という言葉で交わします。(ありがとうは、ハンジャナフ)また、カルムイク語には、ロシア語にはない、細かい親戚の名称が存在しています。

おばあちゃん=エージャ、おじいちゃん=アーバ、父親のお姉さん=ガガ、など、叔父さん、叔母さん以上に誰の誰なのかがすぐに分かる名称で呼び合うのです。そのことからも家族や親族関係が彼らにとって非常に大切なものであることがわかりますね。

昔はトドビチと呼ばれる縦書きの文字が使われていましたが、現在はロシア語に似たカルムイク文字が使用されています。日本語が話せるカルムイク人によると、カルムイク語は非常に日本語と似ている言語だそうです。


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