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子どもと大人の心のケアーどうしていますか?

  • 05.04.2019
  • 日本 Japan

こんにちは、モデル・定住旅行家のERIKOです。

精神の健康維持の問題はいつの時代も消えない問題の一つではありますが、近年ではネットやスマートフォンの普及、コミュニケーションの取り方の変化などで、より若い世代の子どもたちもメンタルの問題を抱えているようです。


次世代教育助成として、IDホールディングス(以下IDグループ)が支援を行なっている、島根大学の「こころとそだちの相談センター」。そのセンター長を務める、岩宮恵子先生を尋ねました。

全国トップクラスの相談件数

ID社が支援を行なっている島根大学の「こころとそだちの相談センター」は、2001年に教育学部の附属施設である「心理臨床・教育相談室」として設立されました。2013年からIDグループの支援が導入され、人間科学部が2017年に設立されたのをきかっけに、「こころとそだちの相談センター」となり、島根大学全体のセンターへと組織が拡大されました。
年間の取り扱い件数は約6000ケースを超え、相談室は12室完備されており、大学施設での相談件数は全国トップクラスを誇ります。

臨床心理士・公認心理師 岩宮恵子先生

島根大学人間科学部人間科学科心理学コース教授の岩宮恵子先生。島根大学で教鞭を取りながら、センターでカウンセリングを行うことに加え、鳥取県・島根県のスクールカウンセラーとして、またIDグループの支援によって震災被害に遭われた方たちの「支援をしているひとの支援」をしに、熊本の専門家へのサポートに震災直後から継続的へ出向いておられます。

先生が執筆されている書籍の数々。興味深い心理学に関するたくさんのご著書も出版されています。

岩宮先生の相談室へ入るなり感じたのは、清々しさ!空気が整っていて、部屋の中にいるだけでも気持ちがいい。
                                             箱庭療法のグッズ

岩宮先生が普段行なっているカウンセリングは、1回50分でじっくり丁寧に話を聞いていきます。この相談センターで行われている心理療法のアプローチはさまざま。特に子どもに対しては遊ぶことを通して自分の気持ちを表現するプレイセラピーが中心です。また必要に応じて、心理検査をすることもあります。その他、クライエントが自由に砂箱の中にミニチュアを置き、自分のイメージを表現することを通して行う「箱庭療法」などもあります。

                              カウンセリングルーム

岩宮先生にセンターやお仕事のことをお伺いさせて頂きました。

Q、センターを拝見させて頂くと、相談室も多く、治療設備も充実していると感じるのですが、これらの設備が揃っているのは平均的なのでしょうか?

A、心理療法にはいろいろな学派のいろいろな方法があるので、一概には言えないのですが、箱庭療法の設備がこれほど整っているところは少ないと思います。ここには小さな子どもから、思春期・青年期、成人などそれぞれに対応した面接室とプレイルームが12室、完備されています。これほどの設備を維持していくのはとても大変なことなのですが、IDグループのような民間企業の支えが非常に大きな後押しになっています。

                                                       プレイルーム

Q、どのような問題を抱えるクライエントさんが多いですか?

A、学齢期の子どもに関しては、最近は発達障がいではないかと心配して連れて来られるお子さんも増えています。またネットの問題、特にLINEやtwitterのトラブルで心の問題を抱えることになった思春期のお子さん、そして子どものスマホ使用が長すぎることで不安になった親御さんの相談も増えています。
LINEやTwitterなどの短文でやり取りをするコミュニケーションは、まだ書き文字での交流が訓練途上の子どもたちにとって、実は難易度が高いツールです。どう読み取っていいのかわからないような表現のやりとりは、疑心暗鬼を呼びやすいのです。顔を合わせて話していれば誤解が生じることなどないことでも、言葉のニュアンスがうまく伝わらず人が怖くなったり、その不安を払拭しようとして逆に攻撃的になったりしてしまうこともあり、それが深刻なトラブルの原因の一つになっていると感じます。

プライバシーに配慮されたカウンセリング申込書。名前の部分が写らないように工夫された複写用紙。

Q、それらを解決するための糸口はありますか?

A、そうですね、とにかく実際に顔を見て会うというオフラインの付き合いを増やすことが大事だと思います。コミュニケーションというのは、言葉が占める割合よりも、その時のその人の表情や、声のトーンによって伝わる部分が圧倒的に多いものです。
LINEやメールだと、何か怒りを向けられているように感じていたけど、会ってみたらそんなニュアンスは全然なかったということは大人でもあるように思います。実際に会ったときの感覚を大事にすることが重要だと思います。
また親や学校の先生だけでなく、それ以外の大人と話す機会を敢えて作っていくことも大事かなと思います。そうすると、世界が少し広く見えて、息がしやすくなる子もいると思います。そのような安心して会える大人として、この相談センターのスタッフや大学院生を求めている子もなかにはいます。
また今は、”スマホ子守”と言って、子どもが泣いたりぐずったりするとスマホやタブレットを持たせることも一般的になってきました。手伝ってくれる人がいないなかでの子育てはほんとうに大変なので、これも仕方がない部分があります。しかしいつでもスマホに任せてしまって二次元の刺激に興味がいく環境に慣れてしまうと、二次元の中で気持ちを抑える癖がついてしまいます。そうすると本当に困った時に生身の人にどうSOSを出したらいいかがわからなくなるという危険性もありますね。
プレイセラピーで、今までいろんな理由で表現できなかったことを表現する機会を与えると、子どもはそれだけで変わる可能性があります。もちろん、そういうことが起こるためには一緒に遊ぶセラピストには専門的な知識が必要になってきます。

Q、施設の管理で大切にしていることは何でしょうか?

A、まず、プライバシーを守る配慮です。基本的なことではありますが、大変重要なことです。
もう一つは掃除です。少しでも気持ちのいい環境でお目にかかれるよう、徹底的な掃除をしています。院生さんたちには、先輩から受け継がれたお掃除マニュアルもあります。来談される方と大事に丁寧にお会いしようとしているという意識を、環境でまずお示しするためには、やはり清潔で整っていることが大切だと思います。部屋や、箱庭療法などで使うグッズなどが汚れていると、それだけで気が滅入ることもありますよね。来られた時に、清々しく感じていただけるような空間は、とても意識して作っています。

                                                                      センターで研究を行う、大学院生たち

Q、このセンターは島根大学で学ぶ学生さんたちも関わりがあるのでしょうか

A、はい、臨床心理専攻の大学院生が教員の指導のもと、心理相談を担当しています。2018年から公認心理師が国家資格となったこともあって人間科学部の心理コースの学生さんの教育にも、センターの施設を使っています。大学院教育の特徴としては、実践を通して学ぶことを何より大事にしているので、修了するまでに、10人くらいの相談者の方を担当する院生もいます。

「こころとそだちの相談センター」は、誰でも年齢制限なくカウンセリングを受けることができる場所で、幼児から後期高齢者までの幅広い年齢のクライエントさんたちが気軽に日々相談に訪れています。費用も50分2000円という低価格で専門家に会いに行けるのです。
私も鳥取によく帰省していた割にはこんな場所があるなんて全く知りませんでした。
2018年からさらなる次世代育成と地域貢献を目指すことを目的に、医学部附属病院のある出雲キャンパス内に「出雲分室」が開設されました。松江地区に加えて、島根県西部地区の方にも利用してもらいやすくなったそうです。

一度足を運んでみたい方は、こちらから。

https://www.psy.shimane-u.ac.jp