美しき砂漠 世界遺産”ヤズド”
ゾロアスター教の発祥地、ヤズドの見どころ
2017年に世界遺産に登録されたばかりのヤズド。キャヴィール砂漠とルート砂漠の交わり、シール・クーフ山脈とハラネグ山地の谷間にあるこの土地の見どころは、砂漠やお菓子、独特な建築、絹織物など様々ですが、その中でもゾロアスター教に関する貴重な場所でもあります。
ゾロアスター教は、イランがササーン朝だった時代に国教とされたいた宗教で、ヤズドはその発祥地です。
ゾロアスター教は、開祖が明確な宗教としては最古で、世界三大宗教に多大な影響を与えて来ました。オリンピックの聖火リレーは、ゾロアスター教の火を聖なるものとする習慣から来ているとされています。
ヤズドには未だにたくさんのゾロアスター教徒が暮らしており、それにまつわる場所も観光地として人気があります。ちなみに、イラン人の多くはイスラム教信者ですが、ゾロアスター教に対してのイメージは、非常に賢く、素晴らしい宗教であると思っている人が大半です。そんなゾロアスター教徒の多いヤズドは、正直で、公平な人というイメージを持られ、尊敬されています。
沈黙の塔
ゾロアスター教が有名なことの一つに、鳥葬という葬制を取っていたことがあります。鳥葬とは、遺体を鳥に食べさせて埋葬するという方法です。ゾロアスター教では、火・水・土・空気を聖なるエレメントをしています。それらを汚さないようにするために、鳥葬されていたと考えられています。遺体を処理していたのは、ハゲタカという鳥でしたが、この鳥であることにも理由があったようです。
理由1、ハゲタカの唾液に含まれている成分は人間の遺体に存在するバクテリアを消化する機能を持っている
理由2、遺体をどこかへ持っていたっりせず、全部そこで食べるため、他の土地を汚さずにすむ
理由3、早く、綺麗に、自然を汚さずに遺体を処理するため
沈黙の塔はまさにその鳥葬が行われていた場所です。昔は、専属の遺体を処理する”ネササラール”と呼ばれる人しか立ち入りが許されなかった場所ですが、現在は観光地となっており、誰でも見学することができます。聖なる地に足を踏み入れることができるのは、私たちがこの時代に生まれた特権です。
アータシュキュデ寺院
ゾロアスター教徒にとって、火は聖なるものです。ゾロアスター教寺院”アータシュキャデ”は、1545年に点火され、灯り続けている聖なる火を見学できます。火は以前、別の場所に納められていましたが、300年前からこの寺院に保管されるようになったそうです。以前からの場所を合わせると、1500年以上灯り続けている火となります。
オリンピックの聖火リレーに由来するゾロアスター教の火
私が見学した日は大変混雑していて、おしくらまんじゅう状態でしたが、お正月休み(3月21日~4月4日くらいまで)を除けば、空いているとのことですので、その時期に行くことをオススメします。寺院の敷地内には、ゾロアスター教の博物館もあり、非常に充実した内容になっています。
世界最大のカナート網
ヤズドは世界最大のカナート網を持っています。そのカナート職工の腕はイランで最も熟練したものとされていました。
この洞窟をくぐって行くと、大量の水が流れる水路にたどり着きます。ひっきりなしに地元の人たちが水を汲みに来ていました。
サーヘボッザマン・ズールハーネ・クラブ
ユネスコの無形文化遺産に登録されている、イランの男性が肉体を鍛えるための肉体鍛錬法です。ヤズドの様々な場所でこの訓練を見学することができます。かなり重量のある棍棒を男性たちが振りかざして、指揮官が取る歌のようなリズムに合わせて運動していきます。場所の作りは、共同浴場のハマムにそっくりで、基本的には格闘技の練習場として使われています。
メフリーズ パフラヴァーンプール庭園
ヤズド州は10のシャフレスターン(群)から構成されており、ヘフリーズはその群の一つです。メフリーズには、いくつものイラン式庭園がありますが、中でもイランの国家遺産、ユネスコの世界遺産に登録されているのが、パフラヴァーンプール庭園です。アリー・パフラヴァーンプールと呼ばれるヤズドの商人の名前から取られた言われているこの庭園は、ガージャール朝時代に建設されました。自然と見事に融合した庭園の広さは5ヘクタールもあります。
ヤズドには、砂漠環境への適応のために独特な建築が多く見られる都市ですが、中でも有名なのが、”バードギル”と呼ばれる煙突のような塔。上空からの涼しい風を国内に送り込める、いわゆる天然クーラーです。
私が訪れた日は、気温40度でしたが建物の中は肌寒さを感じるほど冷んやりしていました。
パフラヴァーンプール庭園の敷地内には、宿泊施設もあり、ゆったりと異空間を楽しみたい人にはオススメです。
また、メフリーズにはお城の跡地がいくつか残っており、そこを訪れてみるのも一つの楽しみです。
岩石砂漠地帯”バフク”
ヤズド市内から南東に125kmにあるバフク。この辺りは乾燥した岩石砂漠地帯で、鉛鉱山が周囲に広がっています。採集された鉄をエスファハンまで運ぶ貨物列車が走っています。この地域には、1988年から保護が始まった国立公園があり、多様な動植物を見ることができます。アジアチーターの主な生息地でもあります。
ここには、”シェノシャデン”Shenoshadenと呼ばれる、砂漠や乗ラクダ体験ができる場所でもあります。砂丘と縁のある、鳥取県出身の私ですが、さすがにイランの砂漠は規模が違います。オススメは、朝か夕方行くこと。日中は気温が上がって熱中症の危険もあるので、注意が必要です。
ヤズドに関しては、ゾロアスター教にまつわる場所を紹介しましたが、もちろん美しいイスラム建築もあります。
ジャメモスクやアミール・チャフマーグ広場(写真)などがそうです。
ヤズド州には、これ以外にも訪れる価値のある場所がたくさんあり、長期滞在しながらゆっくりとそれぞれの街を堪能するのも良いと思います。私は10日間滞在しましが、ほんの少ししか見れなかったので、またイランへ来たらヤズドへ来たいと思っています。
Supported by governmental office of Mehriz city, Bafq city