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グリーンランド人の働きかた

こんにちは、定住旅行家のERIKOです。グリーンランドの人口は5万6千人(2021年)、就労する国民の約半数は行政サービスに従事していますが、主な産業は漁業であり、国内で働く人のうちの16%が漁業関係の仕事に就いています。
グリーンランドの西部イルリサットで滞在している家族のダーヴィセンさん一家の仕事などからグリーンランド人の働き方を見てみたいと思います。

海で働くことを選んだジョンさん


お父さんのジョンさん、現在57歳。通信会社に長年勤務していたそうですが、定年(グリーンランドの定年は67歳)を迎える前の体力のあるうちに自分のやってみたかったことに挑戦したかったそうで、家族に相談し1年前に退職を決意したそうです。その後、観光客用のボートを購入し、観光客をアイスフィヨルドへ案内する仕事や、水上タクシー、荷物を運搬する仕事などをしながら、空いた時間に猟や飼育している犬ぞり用の犬の世話をしています。


海にいるときのジョンさんは、心から自分の居場所に幸せを感じているようで、「Kusanaq!」クサナック(美しい)と言っては優しくほほんでいました。


8月以降はカリブー猟、11月はイッカク猟(歯が角のように長く伸びた鯨)、12月はベルーガ(白イルカ)、そして年間通してアザラシ猟、漁労をしています。ちなみにイルリサットでは、毎年20~25頭のイッカクを捕鯨することが認められています。
ジョンさん含め、猟をするグリーンランド人の職業病とも言えるのが難聴です。ライフルを使う機会が多いため、耳への負担がかかりやすいのです。ジョンさんも電子レンジの音などが聞こえないと話していました。
自然相手の仕事のため、毎日休むことなく働き、休日らしい日ははありませんが、ジョンさんは長時間家にいるのが苦手だそうで、いつも何かやることを見つけては活動しています。


今年は10月に入っても気温が下がらなかったため、連日観光客が訪れていました。写真はフィッシング(タラ)を体験したデンマークから来た3人の女性観光客にジョンさんが捌き方を教えているところです。

25年間教師を続けるリザベスさん


奥さんのリザベスさんは、イルリサットにある2つの学校の内の一つ、マティアストック学校で教師をしています。教師を始めて25年目で、現在は特別学級を担任されています。特別学級は生徒が注意散漫であったり、学習ペースが遅く、通常の授業についていくのが困難な生徒たちが学ぶクラスです。リザベスさんは子どもと接することが昔から好きなのだそうで、教師の仕事は自分にとってピッタリだと話していました。

平日月曜から金曜勤務で、学校が始まる朝8時前に出勤し、16時半には仕事を終え帰宅します。授業以外に保護や教師ミーティングがある日は、残業をしたりすることも稀にありますが、おおよそ定時には就労します。
学校に到着してまずすることは、職員休憩所でパンなどの軽食を食べ、コーヒーを飲むことです。この時間に他のクラスの先生たちとコミュニケーションを取ります。教師の多くは女性で、デンマークから派遣されてきている先生も何人かいました。


私は9年生のクラスで日本についてお話しさせてもらい、地元鳥取県のしゃんしゃん踊りを披露させてもらいました。


休憩時間には軽食をとりながら、和気藹々と女性教師たちと編み物をして過ごします。

グリーンランドでは、教師は公務員かつ高給な仕事の一つです。イルリサットでは所得税として支給額から44%が引かれますが、約40万前後が税金が引かれたあとの平均給料だそうです。

リザベスさんが学生だった頃のグリーンランドは、女性は家事と子育てに専念し、家にいることが当たり前だったようですが、ヨーロッパ化に伴って、女性も働くようになり、共働きが当たり前の社会になりました。女性の社会進出ということで評価される面もありますが、昔の生活を知る人は、それが現代の社会問題を生んでいると考える人も多くいます。両親の共働だと、子どもが家に帰っても誰もおらず、夫婦は帰宅しても疲れていて、子どもの話を聞いたり、コミュニケーションをとる機会が減って、子どもの些細な変化や問題などに気づけないことが多く起こっているそうです。仕事と子育てのバランスをどう保つかという課題は、どの国でも同じようにあるようです。

◎写真家の石川直樹さんがイルリサットやヌークを訪れた時のことも書かれています。