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養蚕の伝統を継ぐ、カヘティ地方の家族

  • 12.11.2017
  • ジョージア Georgia
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モデル・定住旅行家のERIKOです。
ジョージアの定住旅行では、首都のトビリシ、カヘティ地方、スバネティ地方の3箇所に滞在しました。

今回ご紹介するのは、ワインの一大産地である、首都のトビリシから車で2時間の場所にある、カヘティ地方で暮らす家族です。

ワインの一大産地カヘティに住む家族

カヘティ地方は、ジョージア東部に位置しており、ジョージアを代表する画家、ピロスマニの出身地でもあります。ロシア帝国に併合されるまでは、カへティア王国という独立国で、中心地はテラヴィという場所にありました。

ジョージア人にとって欠かすことのできないワインの一大産地でもあり、その理由からこの土地に滞在することを選びました。
受け入れをしていくれたのは、旦那さんと2人暮らしをしている、ラマラ・ベズハシュベリさん。
旦那さんのゴーチャさんは、近くのルスタビという街で働いており、1週間に1度だけ家に戻って来ます。私が滞在中は1度しか会うことができませんでした。

                        シルクを紡ぐラマラさん

ラマラさんは、養蚕の仕事の従事しており、シルクで作った商品を販売しています。
ジョージアではソ連時代、全ての家庭で養蚕を生産することが義務づけられていましたが、現在この地方ではラマラさんのみがジョージアの伝統的な養蚕を続けています。

      ラマラさんを訪問する、アメリカやヨーロッパの外交官の皆さん

ラマラさんに会いに、海外からも頻繁に多くの人が訪れ、彼女の活動は雑誌などにも多く取り上げられています。

50歳で結婚したラマラさん

2人暮らしとはいえ、生き物好きのラマラさんの家には、犬2匹、猫2匹、羊が1匹に鶏がたくさんいて賑やかです。彼女は動物や植物が本当に大好きで、花やペットの話をする時の表情は、本当に生き生きとしていて美しいです。また一番大好きな蚕に出会うのが待ち遠しいのか、いつも蚕の人形を手のひらを広げて幼虫を頬で撫でる仕草をしていました。

フェミニンで母性が強い彼女ですが、なんとラマラさんが結婚したのは50歳を過ぎてから。
ジョージアでは今でも女性の平均結婚年齢は、22,23歳と日本と比べるととても早いです。30歳近くになって結婚していないと、何か特別な理由があったり、離婚しているのではないかと思われるのが一般的です。
今は女性も働くようになったので、婚期は遅くなって来ているようですが、ラマラさんの若い時は結婚しない女性というのは周りに一人もいなかったようです。

「姉や兄が結婚し、生活をしていく中で、夫婦喧嘩をする様子を散々見てきました。その影響で”結婚というのは愛を育んでいくものは違うのではないか”と思い始めるようになり、私は結婚に憧れを持つことはありませんでした。甥っ子や姪っ子の面倒も毎日見ていましたので、常に自分の子どもがいるような感覚もあり、自分の子どもが欲しいという思いもありませんでした」

ラマラさんが見せてくれた昔の写真には、女優のように美しい姿の彼女と、疲れ切った顔の彼女の姿がありました。

「数年前に兄が亡くなったの。自分で命を絶ったのか理由はわからないけれど、それから私の人生は何年も暗闇の中に入ったわ。顔は老けて、鏡を見る気も何もする気が起こらなかったわ。最近になって、やっと何かをやるという元気が出て来たの」

ラマラさんは毎日真っ黒な服しか着ません。ジョージアでは、身内が亡くなると、1年、もしくはその残りの生涯黒い服しか着ないという習慣があり、特に田舎では黒い衣装に身を包んだ女性をよく見かけます。
ラマラさんは半年前に親を亡くされたばかりなので、基本的に毎日黒い服を着て生活していました。


先祖の写真や亡くなった両親の写真が飾ってあるスペースがダイニングにありました。ジョージアではワインの乾杯の時に、必ず何に対して乾杯をする習慣があります。夕食時にワインを飲む時、彼女は決まって亡くなった両親のこと、そして私と私の家族に乾杯をしてくれました。しかし、唯一お兄さんの写真は並んでおらず、祈りが捧げられることもありませんでした。

ほぼ自給自足の暮らし

ジョージア人は一般的に朝型でない人が多く、朝はゆっくり起床し、朝食をとります。大体はパンや卵と野菜を炒めたものなど、結構しっかりとした食事です。
また、ジョージアは”マッツォーニ”と呼ばれるヨーグルト大国!どの家もほとんど自家製で作っています。

家の庭には、野菜、リンゴ、アーモンドなどの木があり、また卵は鶏から手に入るので、ほぼ自給自足、無農薬でナチュラルなものばかりが食卓に並ぶ生活です。
また彼女は、ホメオパティック・メディシンに精通していて、庭に生えている薬草や花をブレンドして、手作りの薬を作っています。

ジョージア正教を信仰するラマラさんは、宗教的な理由から、水曜と金曜は乳製品、お肉、卵を食べませんでした。しかし、周りにそれを強制することは一切なく、「あなたはたくさん食べなさい」といつものメニューを作ってくれました。

「神様は最も美しい生き物にシカを作りました。ある日、シカはけたたましく鳴く狼から逃げて神様にこう言いました。「もし私を愛しているなら、どうして私に惨めな思いをさせる狼を作るの?」神様は狼を追い払いました。するとシカはジャンプをする必要がなくなってぶくぶくと太り、怠慢で醜い姿になりました。
そうなったシカは神様に向かってこう言いました。「神様、なぜあなたが狼を作ったのかわかったわ。私はスリムでlitheでいたいの」「敵に乾杯!」

夕食時は、こんな風にジョージアの物語を話してくれたラマラさん。そして夕食が終わった後は、外の階段に座って、とりとめのない話をしました。
笑い転げる日もあれば、しんみりとした話になって励ます日もあったり。

ジョージアという小さな国の小さな村で出会った家族。当たり前の日常がとても美しいということを改めて教えてくれました。