タタール人 ムスリム家族の暮らし
こんにちは、モデル・定住旅行家のERIKOです。
タタールスタンで滞在させてもらっているのは、イスラム教を信仰するタタール人家族のマントゥさんのお宅です。夏休みの間だったので、滞在先は彼らが普段住んでいるカザンにある家ではなく、「ダッチャ」と呼ばれるサマーハウスでの暮らしを共にさせてもらいました。
一家の主人であるラファエルさん一家は、奥さんのアルソさん、長男のノルモハッド君(13歳)、長女のファティマ(11歳)、次女のアイシャ(5歳)の5人家族です。
マントゥさんのダッチャは、大きな一軒家です。この周辺の家はどこもフェンスで囲まれていて、外から中の様子が見れないようになっています。
ダッチャはロシア人がソ連時代から伝統的に持っている、菜園付きのセカンドハウスです。もともとは、第二次世界大戦中から戦後の食糧不足解消として、政府が600平米の土地を国民に与えることを法律化したものです。ロシア人の習慣で、週末や夏休みを過ごす場所となっています。
イスラム教徒が使うムスリムアプリ
タタールスタンでは、イスラム教のスンニ派が信仰されています。信仰度や身なりなどは、各家庭や個人によっても大きな差はあります。マントゥ一家はその中でも熱心な信仰心を持っています。1日に5回お祈りを捧げ、もちろん食事は全てハラルです。
子どもたちがグミのお菓子を人からもらっていた時に、「これはゼラチンが入っているから、食べれないわ」と言って手をつけていませんでした。ゼラチンは動物性たんぱく質で、豚の皮も使われている可能性があります。子どもながらしっかりとした食べ物の知識を身につけていることに驚きました。
一緒に生活を共にする間も、奥さんのアルソさんが私の前でヘジャブ(髪を隠すためのスカーフ)を外すことは一度もありませんでした。
こちらはMuslim Proと呼ばれるアプリ。コーランが読めるほか、メッカの方角が表示される他、お祈りの時間になるとアザーンが流れるようになっていて、多くのイスラム教徒の携帯にDLされています。
食糧確保と夏休み中の副業ビジネス
マントゥさんのダッチャにも菜園があります。ほとんどの野菜や果物はこの畑から収穫されて、日々の食材として使われています。夏休みといえど、ダッチャでは畑仕事をするのが一番の目的。子どもたちの日課にもなっています。
マントゥさんの家にあったこの機械。卵がいっぱい並んでいますが、なんだと思いますか?
実はこれ、鶏の卵を孵化させる孵卵器なんです。ここで卵の温度を管理し、一斉に孵化をさせ、ある程度育てて近所の人たちへ販売しています。雛が孵る日は大忙しで、夜通し見張りを続けます。
食べ過ぎ注意!美味しすぎるタタール料理
奥さんのアルソさんは料理が大好きで、本当に毎日美味しい手料理を振舞ってくれます。
タタール料理の主食はジャガイモ。毎食必ず使われる食材です。また、タタールではハラル食材が使われており、豚肉を食することは稀で、鶏肉、羊肉、馬肉が多く使われます。
ベレシュ
肉と玉ねぎ、ジャガイモを生地の中に入れてオーブンで焼いた料理です。中の具材にパン生地にのせて食べます。
クスタビ
個人的にタタール料理で一番好きな料理。ジャガイモのピューレを薄い生地で包んだ簡単にできる料理です。羊の油が塗られています。
トクマシ
タタールの鶏ガラスープラーメンと言ったところです。日本人の口には非常に合うスープです。タタールでは、この麺を細く均等に切れることが、良いお嫁さんの条件とも言われています。食事と結婚相手の条件のようなものは、どの国でもありそうですね。
世界一紅茶を飲む人たち
ロシア人は無類の紅茶好きとして知られていますが、タタール人はそれ以上に紅茶を飲みます。
ある学者がタタール人が1日に飲むチャイの回数を数えたところ、21回という結果が出たというのを聞きました!
極端な数字にも思えますが、一般的には、食事の前、食事中、食後にチャイを飲むが習慣で、3食×3回=9回が最低として、それ以外のティータイムを合わせると、少なくとも10回以上は飲んでいることになります。
チャクチャク
チャイを飲むときには、必ず甘いものをお供にします。その代表的なお菓子は、チャックチャックと呼ばれるもの。小麦粉の生地を油で揚げて、はちみつを絡めて固まらせたものです。食感がサクサクしていて、紅茶と合う甘さで癖になります。お土産にオススメなのは、こちらの社のものです。
親と子どもの関係
タタールに来る前に定住していたカルムイクでもそうですが、タタールでも子どもの数は多いように感じます。奥さんのアルソさんの両親はカザンから300km離れた「ボルガル」という場所に住んでいるのですが、定期的に訪問したり、子どもたちを代わる代わる滞在させて、手伝いをしたりしています。これはロシア全体に言えることかもしれませんが、親を老人ホームなどに居住させるケースはとても少なく、子どもが親の面倒を見るのは、当たり前という考えがあります。