世界のお墓シリーズVol.4 ”タタールスタン共和国”
こんにちは、モデル・定住旅行家のERIKOです。
”世界のお墓シリーズVol.4” 今回はタタールスタン共和国のお墓をご紹介したいと思います。
タタールスタンでは、イスラム教のスンニ派が信仰されていますが、彼ら独自のタタール文化が融合されている部分も多く見受けられ、お墓からもそれが見て取れます。
こちらが訪問したタタール人の集合墓地。入り口にはタタール語で”生きている人に感謝し、死人を誇りに思え”と書かれています。
暮石には、月のマークがあり、イスラム教のお墓であることを表しています。お墓は全てメッカの方を向いて立っています。ロシアの一般的なお墓のように、暮石に故人の顔が描かれています。これは一般的なイスラム教のお墓とは少し異なるようです。
お墓詣りは基本的に年に一回から二回
タタール人がお墓詣りをするのは、1年に2回、春と秋の季節なのだそうです。
雑草が生える春の時期と、落ち葉で埋め尽くされる秋の時期。この時に掃除とお墓詣りをするのが一般的なのだそう。
またそれ以外には、基本的に亡くなった人の命日か、誕生日の日にお墓を訪れたりもするのだそうです。暮石には、その人の誕生日と命日が記載されています。また、もし死んだ人が夢に出て来た場合は、お墓に詣らずとも、お祈りをしなければならないそうです。
葬式では泣いてはダメ
人が亡くなると、故人の自宅で出棺までの準備を行います。”ムーラ”と呼ばれるモスクに仕える人と、女性4人と合わせて5人で、遺体を完全に洗います。口や鼻、お尻の中の汚れまでもとるのだそうです。
遺体は”サバン”と呼ばれるシーツに包まれます。出棺の際は、ムーラから2つのことを質問されます。
1つは「故人が善人であったか?」2つ目は「故人は人から借りがないか?」ということです。
借りとは、人に返してない恩であったり、お金などの物理的なものも含まれるそうです。この質問で故人に問題がなければ、無事墓場まで送り出されます。出棺の際や埋葬の時は、絶対に悲しんだり、泣いてはダメだと言われています。
墓地までは担架のようなもので担いで運びますが、必ず早朝のまだ誰も墓地にいない時間帯と限られています。埋葬を他人に見られないように、作業はスピーディーに行われるのだそうです。また埋葬方法は全て土葬で行われます。
故人の悲しみをかき消すように行われる儀式たち
戦争で亡くなった方の墓石には、共産主義のシンボルである星型が刻まれている
埋葬が終わると、家に帰って大掃除が始まります。故人の遺品を全て外に出し、処分します。故人が病人であった場合の処理は、その全てを洗ったあとに燃やすのだそうです。また、部屋中の壁も綺麗に水で洗います。
亡くなった後からたくさんの儀式があるのですが、残された家族が寂しさを感じないように、用意されていると考えられています。
亡くなった後の儀式
死後3日目 親戚が男性のみを集め、皆んなでコーランを読みます。家でお祈りをした後は、塩と”サダカ”と呼ばれるお金、石鹸、タオルなどの香典返しのような品物を渡します。またこの時に振舞われる料理は、野菜、鶏肉、タクマッチ(麺入りのスープ)などです。
死後4日目 男性と女性に分かれて集まり、お祈りをします。
死後7日目 この日は女性が集まり、3日目に行われた行事と同じことが行われます。
死後51日目 この日は、故人が一番苦しむ日と言われています。アラーによる最後の審判が下される日です。また、物理的に体内の内臓が破裂を起こす日だとも言われています。
死後1年後 お墓詣り
お墓を案内してくれた知人は、約10年前に最愛の息子さんを不慮の事故で亡くされてしまった方でした。自分が入る予定だったお墓に息子が入っていることが未だに信じがたいようでした。彼女は息子さんが亡くなった後、文化活動団体を立ち上げ、現在はそれに生きる希望を見出していますが、以前のように平常心で暮らしていくことは非常に困難であると、息子さんのお墓を掃除しながら私に語ってくれました。
私たちの日々の時間には、生きている人間と、すでにこの世を去った人間と関わりを持つ時間があることを思い出しました。