ポルトガル中部 ミゲルさんが見つけた働く場所と暮らす場所
こんにちは、定住旅行家のERIKOです。ポルトガル中部・ベイラバイシャセントロBeira Baixa Centro に位置するカステロ・ノーボCatelo Novoという村に来ています。ここでは、「ポウサーダ」と呼ばれる宿泊施設を経営する、ミゲルさんとペドロさんカップルの家庭に滞在しています。
本業とポウサーダと二足の草鞋
ミゲルさんとペドロさんは、Pedra Nova(ぺドラノーヴァ)というポウサーダを経営していますが、それと並行してそれぞれが本業を持っています。ミゲルさんはインテリアデザイナーとして、ペドロさんは医者として働いています。ペドロさんは首都のリスボンに在住しており、週末などの休みにカステロノーボで過ごす生活を送っています。
PedraNovaはもともとぺドロさんの実家だった場所をリノベーションし、ミゲルさんがインテリアデザインを手がけました。2020年にオープンしたのですが、パンデミックによりすぐに一時営業停止となり、予想外の大変なスタートを切ったのです。
ヨーロッパではコロナ前とまでは言えないものの、人びとが以前のように旅行をしたり、海外でバケーションを過ごす状況が戻りつつあります。私が滞在中も、国内旅行をするポルトガルやオランダ、イギリスなどからのゲストも多く宿泊していました。
現在、彼らはお互いの仕事環境により、週末婚のような生活を送っています。将来的にはペドロさんがカステロノーボに戻り、このポウサーダを一緒に運営する予定なのだそうです。
働く場所と暮らす場所
ミゲルさんも週に何度かクライアントと会うために、リスボンへ出かけて行くこともありました。「リスボンは仕事をする場所、カステロ・ノーボは暮らす場所」と話していましたが、自分の心のペースにあった居場所を見つけられることは幸運なことかもしれません。暮らしを充実させることが、仕事や他の活動にも繋がっていくのだとミゲルさんの生活姿勢を見てそう感じさせられました。
繁忙期である春から夏にかけては、ゲストがひっきりなしに訪れます。そのため長期休みをとることはできませんが、秋や冬などのローシーズンに入ると、ミゲルさんとペドロさんは、お互いの趣味である旅行へ出かけるそうです。今年の秋は、エジプトのナイル川のクルージングへ出かける予定なのだとか。
Pedra Novaが担う地域的役割り
Pedra Novaへやってくるゲストのほとんどは、滞在中、近くの歴史的村々を訪ねたり、プールやサウナでゆったりとした時間を過ごします。また料理上手なミゲルさんが作るディナーを食べるも楽しんでいます。中には宿泊はせず、ミゲルさんの料理だけを食べにくるゲストもいるのだとか。
Pedra Novaがこの小さな村に存在する価値は、ゲストに楽しんでもらうだけではありません。
カステロノーボを含む、ベイラ・バイシャ地方の12の歴史地区に指定された村々では、地元の若者たちによって、「12の歴史村プロジェクト」Aldeias Historicas de Portugalと呼ばれる、積極的な地域おこしのプロジェクトが行われています。そのプロジェクトのうちの一つが、今年の9月から始まった、12の村の伝統的なレシピを提供する「Receitas que Contam Histórias」(ストーリーを伝えるレシピ)。観光客にそれぞれの村で違う料理を楽しんでもらうことと、次世代の若者へレシピと文化の継承を行うという目的を持っています。また農作物の生産段階から、サステイナブル農業、生物多様性保護に着目して行われているのも特徴です。
村を代表するホテルやレストランが代々それぞれの村で引き継がれた物語のある料理を提供しています。Pedra Novaはこのカステロ・ノーボ村のレシピを継承するレストランに選定されています。
カステロ・ノーボ村の伝統メニューはこちら。前菜にライ麦パン、ヤギのチーズ、オリーブ。チキンスープ。メインは鶏肉のオーブン焼きです。ポルトガル中部地方を訪ねたら、是非ミゲルさんとペドロさんのポウサーダを訪ねてみてください。
◎ポルトガル震災と独裁、そして近代へ 市之瀬敦