ポルトガル中部 高齢者の暮らし
こんにちは、定住旅行家のERIKOです。ポルトガル中部にあるベイラバイシャセントロBeira Baixa Centro 地方、カステロ・ノーボCatelo Novoという村に滞在中です。この村の人口は50人で、そのうちおよそ10人の高齢者が暮らしています。村には「セントロ・ソシアル」という行政機関があり、おとしよりたちのケアーが行われていました。
身寄りなく一人で暮らすおとしよりたち
ポルトガルでは、家族の絆が深く、高齢になって身体が不自由になっても、施設などに入らず子どもたちと同居するのが一般的です。その一方で近年、若者たちが家族を離れ、仕事のために別の都市で暮らしている人も少なくありません。
カステロ・ノーボにもそのような事情で、一人暮らしを余儀なくする高齢者たちがいます。彼らは食事の世話や日常の生活ケアーを必要としている人たちでもあります。
「セントロ・ソシアル」では、助けが必要な高齢者にケアーサービスを行っています。
ソニアさんが食事を配る10の家
ソニアさんはセントロ・ソシアルで働くケアースタッフの一人。彼女は毎日10軒の家を訪問し、食事を届けています。主な対象者は、健康などに問題があり、自分で食事の準備ができない人や、生活困窮者です。介護資格を持つ彼女は、家々を訪れる際に血圧を測ったり、話を聞いたり、家の掃除や身の回りの世話が行き届いているかを確認していました。
彼女の仕事に同行したことで、この村の社会の別の側面を垣間見たような気持ちになりました。美しい村の景観の中にある、家の扉を一つ開けると、こじんまりとした部屋に寂しく佇む高齢者たちの姿がありました。その多くの家にはバスルームもなく、中には半月以上着替えもシャワーもしない人も多いのだとソニアさんは話してくれました。
セントロ・ソシアルでは、月60ユーロで洗濯、掃除のサービスと毎日の食事を受け取ることができます。通常の老人ホームに入ると月最低でも100ユーロは支払わなければならなくなるようで年金生活で暮らす彼らには、ありがたいサービスの一つです。
食事を届けた後、健康状態をチェックするソニアさん
着替えを手伝ったり、日々の体調の変化を見逃さないようにケアーする
「昔は自分の親と同居をして面倒をみるのが当たり前でした。現代は若者も共働きになり、自分たちの生活に忙しく、なかなかケアーをしてあげようと思う人たちが減ったように思います」
ポルトガル社会の裏の顔
訪問先の高齢者たちは、彼女が毎日食事を届けてくれることはもちろん、膝を突き合わせて話ができることが精神的な安定につながっているようでした。多くの人は、彼女が来ない時間を一人で過ごし、外出することも少なく、近所の人たちとの付き合いも希薄な様子でした。親切でフレンドリーな印象のあるポルトガル人ですが、あるところで閉鎖的な部分が、このような場面にもあるのかもしれないと個人的に感じた経験でした。
◎ポルトガルの海 フェルナンド・ペソア