カルムイク人幸せの秘訣
こんにちは、モデル・定住旅行家のERIKOです。カルムイクに滞在していて感じる2つのこと。それは、男性が男らしく力強いこと、そして人びとが満足感溢れる暮らしを送っていることです。
モンゴルの血を引く男性が強さを強調する傾向があるのか分かりませんが、肩幅はがっしりとしていて、力持ちで、強い!という印象を受けます。
滞在しているムチカエヴァ家の1歳4ヶ月のバニャは身体中に傷やかさぶたがあります。元気な男の子の証拠と言えますが、転んで血が出てたとしても、さっと立ち上がり何事もなかったかのようにまた歩き出します。
見ているとはっとしますが、お母さんのナターシャさん曰く、「甘やかすと痛みを感じるからちょっとのことではあやさず、過剰に反応しない」とのこと。確かに転んでも誰もびっくりしたり、宥めたりしません。カルムイク人の強さは幼い頃から鍛えられるのでしょう。
そして、多くのカルムイク人と接して感じるもう一つのことは、内面から溢れ出す充実感と幸福感です。
カルムイク人が信仰していたテングリとは?
上は身体的なエネルギー、下はコミュニケーションやスピリットを表すテングリのサイン
カルムイクの文化を知っていく中で、カルムイク人がかつて信仰していた「テングリ」という宗教を知りました。テングリとは天神(テンジン)、いわゆる天を神様と信仰するシャーマニズムに基づく宗教です。カルムイク人が遊牧民であった頃は、主にこのテングリという宗教が信仰されていました。
現在、カルムイク人のほとんどは仏教を信仰していますが、中には未だにテングリを信仰をしている人も少なくありません。そして、このテングリの思想は、カルムイク文化の中に大きく影響しています。
カルムイク人が大切にしている2つの言葉
カルムイク語に、「ジルグル」と「クン」という言葉があります。この2つは、カルムイク人が最も大切にしている言葉です。
ジングル
「ジルグル」という言葉。直訳すると、”人生”、”幸せ”という2つの意味を合わせたような言葉です。人生=幸せなものであることを表しています。
ロシア語で人生はЖизнь(ジズィン)と言いますが、これはживот(お腹)=食べることから来ており、生きること=食べていくことの意味が強調されています。カルムイク語のジングル(人生)という言葉の価値観とは異なることがわかります。
カルムイク人はネガティブな行いを非常に嫌がる傾向があります。例えば、ため息、腕を組む、ポケットに手をいれるなどの行為がそれを意味します。それらは「ムーヨル」と呼ばれますが、そのような行為をネガティブだと捉えられており、これらを行うことで相手に高圧的な印象を与えると感じています。
キュン
カルムイク人が大切にしているもう一つの言葉は「キュン」です。発音は日本語の「君」にも似ています。これはパーソナリティを意味し、「人はそれぞれ違ったパーソナリティを持つべきだ」という思考を表しています。
かつてチンギス・ハンが、люди- основа любого дела (人は全ての財産 )と言いましたが、カルムイクでは人と同じであることはあまり良いこととされません。
生物学でも、我々のような有性生殖は多様であるために作られていると言われていますが、違いがあることが、地球の様々な環境に対応できるということにも共通点があるような気がします。
カルムイク人が守る4つのこと
テングリの考えでカルムイク人に大きく影響している4つのことがあります。
1、自分自身のパーソナリティーとハーモニーを持つこと。一人一人がミッションを持っていて、才能とはそのミッションを果たすための道具
2、他人と積極的な関係を持つこと。嘘をつくことを禁じ、ホスピタリティーを持つことが大事。(これはモンゴル帝国時代、法律にもなっていた考えでした)
3、自然と共存する
4、神との調和
カルムイク人の日々の充実感はどこからきているのだろう?と色々と考えていたとき、テングリ思想に出会い、妙に納得でききました。テングリを信仰していないカルムイク人も、このような思想はカルムイク文化の中に浸透しており、それらは子どももしつけや道徳教育の中にも見られます。
テングリの儀式
カルムイクのエリスタの平原にテングリの祭事を行う場所があります。私もテングリの儀式に参加させてもらいました。
まず、牛乳と石を用意し、北、東、南、西の方角に牛乳を数滴撒きます。その後、タルチョで覆われている石積みを3回時計回りに周りながら、牛乳を垂らします。
最後は自分が持ってきた石を石積みの好きな場所に置き、手を合わせます。こうすることで、心身共に浄化されるのだそうです。
テングリ信仰の考えや発想は、充実感や幸福感は近くにいる人に伝染するということに視点が置かれているように感じます。それは、カルムイク人の謙虚さや明るさとなって現れているようです。
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