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ポルトガル山岳地域 2つの村の絶景

こんにちは、定住旅行家のERIKOです。ポルトガル中部、スペインと国境を接した内陸のベイラ・バイシャ州に定住中です。ポルトガル中部地方は、リスボン、マデイラ、ポルトなどと比べると観光インフラも進んでいなく、訪れる人が圧倒的に少ない地域です。その一方で、興味深い歴史や文化に触れることができ、ポルトガルの海でない絶景を感じることができます。山好きな私としては、ポルトガルへ来たら絶対訪れたいと、かねてから思っていた地域でした。

巨石の村「モンサント」

秘境の地やヴァナキュラー建築に興味のある人であれば、一度はこの村の名前を聞いたことがあるかもしれません。最近、Netflixのファンタジー・ドラマシリーズ、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の撮影現場として使われたことでも話題になりました。


また、「ポルトガルで最もポルトガルらしい村」、「ポルトガル12の歴史村」にも選ばれています。モンサント村は人間の何倍もある巨大な石が村中にゴロゴロしている不思議な村です。村は標高750m地点にあり、交通手段は車か、カステロ・ブランコという街から出ているバスでのみ行くことができます。

モンサントにある山の頂上にはその昔、ローマ人が築いた城跡が残っています。テンプル騎士団がやってきたあと、村人たちは彼らがつくった城壁の中で暮らしていました。19世紀後には戦いも少なくなり、人びとは城壁の外でも生活を営み始めます。その際に、この巨石を利用して家、家畜小屋、農具庫などを作ったそうです。

気温の高い日でしたが、道に沿って立ち並ぶ巨石を使った家々が影をつくってくれたので、快適な散歩となりました。


自分より大きな人工物に囲まれることはあっても、このように大きな自然物の中に佇むことは滅多にありません。この感覚をどのように表現したら良いかと想像していると、スイフト著の「ガリバー旅行記」を思い出しました。主人公のガリバーが2番目に訪れた国、ブロブディンナグの世界です。全てのものが12倍あるという巨大な王国なのですが、それを彷彿させる場所です。


村は数時間あれば全て見て回れる大きさですが、フォトジェニックな景観が多く、ゆっくり時間をかけて写真を撮ったりするのもおすすめです。

モンサントの郷土料理

「ポルトガル12の歴史村」は中部地方の若者たちの地域創生プロジェクトの一つで、1995年に始まりました。景観・文化財の保存、観光客誘致、次世代への文化継承を目的に、さまざまな取り組みが行われています。そのうちの文化継承にあたるプロジェクトが、「ストーリーを伝えるレシピ」(Receitas que Contam Histórias)です。12の村に代々伝わるレシピをそれぞれ指定されたレストランで、観光客に提供すると同時に若者へ食を通じた文化継承を行うというものです。


Ensopado de Cabrito ヤギ肉のスープ料理
こちらの料理がモンサント村を代表する料理として提供されています。このプロジェクトは今年の9月から始まったばかり。モンサントにあるレストランで食べることができます。

今もなお要塞の中に村人が居住する「ソルテリャ」


城塞の入り口

ベイラ・バイシャにある村でもう一つ紹介したいのが、ソルテーリャ村です。この村はポルトガルの中でも最も古く美しい村の一つで、昔の原型を見事にとどめた姿をしています。


ソルテリャの1番の見所は、760mの断崖絶壁の上に建てたれた、800年の歴史を持つ要塞と城です。この要塞はキングサンチョ1世によって建設されました。スペインとの国境近くにある村々は、当時国の重要な防衛線の役割を担っていました。


城壁に囲まれた住宅地

中世の雰囲気をそのまま味わえるようなソルテーリャ村ですが、現在もこの城壁内に人が居住しています。どの家も護影石で作られた平家です。この村までの公共交通機関はなく、プライベートカーか、レンタカーを手配するしかありませんが、それでも訪れる価値のある村の一つでしょう。

 

◎「ポルトガル西の果てまで」福間恵子