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五島列島 キリシタンの家族

こんにちは、モデル・定住旅行家のERIKOです。

長崎の五島列島に来てみたいと思った理由の一つに、この島にある「キリシタンの歴史」がありました。海外で定住旅行するときは、キリスト教徒の家に滞在させてもらうことが多く、その信仰は彼らの暮らしや生き方に大きな影響を与えています。一方、日本では宗教信仰が、暮らしと密接しているという印象は薄い環境にあるのが一般的です。しかし、五島のキリシタンたちにとっては、信仰は生活の一部であり、精神の安定を図るものとしてなくてならないものです。
この五島列島では、昔からキリシタンの文化が根付き、多くの迫害や虐殺に遭いながらも、今尚、その信仰が暮らしの中に存在しています。
私が滞在させてもらった、古田家の家族を紹介します。

島の家族 古田家

                       Photo:Kotaro Kikuta

古谷正人さん (洗礼名ペトロさん)
大工さん、漁師を経て、現在は製塩業を営んでいます。先祖は代々厳格なキリシタンの家系だったそうです。正人さんのお父さんは神父さんを目指すほど、信仰の熱い方だったそうで、その反動で正人さんは教会から足が遠のいてしまったと話します。

古谷いとえさん (洗礼名エリザベットさん)
家族を陰で支えるお母さん。家事はもちろん、重労働の畑仕事も淡々とこなします。毎週日曜のミサも欠かさず通っておられます。

                            Photo:Kotaro Kikuta

古谷吉成さん (洗礼名ペトロさん)(写真真ん中)
正人さんといとえさんには、2人の息子と4人の娘がいます。その内、島で生活しているのは、長男の雄一さんと次男の吉成さん、レイコさん、あかねさんの4人です。
2人の息子たちは正人さんの後を継いで、漁師として働いています。それぞれが自分の船を持ち、日々漁に出かけています。そのため、毎日のように鱗が取れたり、少し傷が付いた魚が家に届き、食卓には贅沢な料理が並びます。


こちらの黄色いシマが入った魚はイト。その他、頭の丸いアマダイや、見たこともない魚ばかりが毎日の食卓に並びます。
五島では超少子高齢化が進んでおり、若い人たちの島離れが進んでいます。そんな中で、島に残り漁師に従事する彼らはとても貴重な存在です。

家の祭壇


家の中には、通常仏教徒が仏間として使用する部屋に、祭壇が置かれています。キリストやマリア様の像と並んで、先祖の写真も一緒に飾ってあります。仏教では、夫の家に嫁ぐと、自分の親の遺影は仏壇に置きませんが、カトリックの方々の家には、両家の家族の遺影が置かれていることが頻繁にあります。
古田さん夫婦が子どもの頃は、毎日欠かさず祭壇の前に座って、お祈りを家族揃ってされていたそうです。少しでも脇見をすると、厳しくお説教されていたそうで、自分たちの子どもには、お祈りなどは強制していないとのことでした。

カトリックのお祝い日に食べる ふくれ餅


こちらは、カトリックのお祝い事の日などに伝統的に食べられている蒸しパンです。小麦粉を発酵させた生地に小豆あんを入れて丸め、サルトリイバラの葉に乗せて蒸して作ります。昔からおやつとして親しまれていた食べ物です。

日曜の御ミサと稽古場


古田さんが暮らす村の人たちのほとんどはカトリック信者のため、日曜の朝はそれぞれが自宅から近くにある教会へ御ミサに出かけます。
この日、古田さんのお孫さんのさえちゃんは、教会の奉納の当番でお手伝い。それぞれの教会は当番制で、教会や墓地の清掃をしたり、花を活け替えたりします。
また、子どもたちは”稽古場”と呼ばれる、聖書やキリスト教の勉強をする会へ週に一度出かけています。そこでは、シスターたちが子どもたちに分かりやすく物語や教えを伝えています。

お墓


集落によって様々ですが、基本的に教会から近い場所に墓地があります。キリスト教徒だけの墓地や、仏教と混じっている場所など様々です。カトリックの場合、毎年11月1日の死者の日にお墓参りに行きます。日本はこの日だけだそうですが、イタリアや中南米では、11/、2日の両日に参拝するのが一般的です。

正人さんは、「仏教徒は、カトリックよりも頻繁にお墓参りに出かけるし、先祖をとても大切にしている人たちだというイメージがある」と話していました。
現在は火葬が義務付けられていますが、昔は死者が起き上がった時に、教会の方を向くように埋葬されていたそうです。

五島のカトリック

私もこれまで様々なカトリック信仰を見てきましたが、特に多かったのは、土着の宗教とカトリックが融合している形です。ボリビアのアラシータや、ペルーのインティライミ、コイヨリティなど、アミニズムと融合しているのをよく見かけます。
五島列島のカトリックは、先祖が守ってきたものを大切にすることや、独自のお祝い事の食べ物などもあることが、日本らしさと融合した点だと感じます。
また当たり前ですが、彼らに仏教的な価値観がないため、日本人なら当たり前に考える、生まれ変わりや、盆正月の概念がありません。
彼らと会話を重ねていく中で、自分がどれだけ日常の中に仏教の考えが植え付けられているかを感じました。それは海外で感じるそれよりはるかにインパクトのあることでした。