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グリーンランド首都ヌークに暮らす芸術一家

  • 01.05.2022
  • グリーンランド Greenland
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こんにちは、定住旅行家のERIKOです。グリーンランド2ヶ所目の滞在地、首都のヌークにやってきました。最初の滞在地であるイルリサットからカンゲルルススアークを経由して到着しました。ヌークの町が飛行機の窓から見えた時は、とにかく山々の景色が印象的でした。さて、今回はヌークで滞在させてもらうキルセンご夫婦とヌークの町を紹介したいと思います。

18千人が暮らすグリーンランドの首都ヌーク


ヌークはグリーンランド南西部に位置する首都であり、グリーンランド最大の都市です。人口は18,800人で全人口の約40%がこの街に暮らしています。ヌークには政府機関やグリーンランド唯一の大学機関がある他、北極圏の環境、動物、温暖化などを研究しているグリーンランド天然資源研究所などがあります。


ヌークは1728年に宣教師としてこの地にやってきたハンス・エゲデが基礎を作った町ですが、その昔紀元前2000年頃は、サカック文化を持った古代イヌイットが居住していました。デンマーク植民地時代、この街は「ゴッドホープ」と呼ばれていました。
ヌークに来る前に滞在していたイルリサットと比べると気温は0度位(11月)で暖かいはずですが、風が強く吹き荒れていて、より寒く感じました。

芸術家のファミリー


ヌークの家族キルセン一家です。私が滞在させてもらった家は、イェンス・キルセンさんとドルテ・キルセンさんのご夫婦の家で、彼らには娘二人と息子一人の3人のお子さんがいます。息子のアダムさん(右奥)は、彼らの近所に暮らし、グリーンランドで一番有名な歌手でもある娘のキンマナックさん(左奥2番目)も市内に暮らしています。長女のカミリアさんは、ドルテさんの前夫さんとの子どもで、現在は結婚してイギリスに住んでいます。

彫刻家のイェンス・キルセン


イェンスさんはデンマークのヴィゴという場所に生まれました。音大でフルートを勉強していたそうですが、仕事にできるほどの技量はないと見切りをつけ、別の道を考えるようになったそうです。
1974年に徴兵でグリーンランドの南部イヴィドヴドゥというアルミニウムが採掘される鉱山の監視を6ヶ月間行い、1977年にグリーンランドの北部アースィヴィックコティリセッドに行った際に、妻のドルテさんと出会ったそうです。翌年結婚した彼らは、20年間アシアットという町に暮らしていました。ドルテさんの出身地である南部のパアミュードに住むことも考えたそうですが、犬ぞりを持ちたかったため、アシアットに家を構えたそうです。(シシミウットより南ではグリーンランド犬の飼育が禁止されているため)

彼はデンマーク人でありながら、カラーリット語を流暢に話し、カラーリット語で本を出版するほど精通しています。デンマーク語が通じるグリーンランドで、彼のようにデンマーク人がカラーリット語を習得するケースは大変珍しいです。滞在中、イェンスさんからカラーリット語の特徴や言葉の意味、文化や習慣などをたくさん学ばせてもらいました。


国内に数点あるイェンスさんが手がけた彫刻作品
イェンスさんは現在、大工の仕事をしながら、彫刻家として数々の作品をグリーンランド国内に製作したり、本の執筆などを手がけています。

看護師のドルテ・キルセン


ドルテさんは、南部のパアミュード出身で両親共にカラーリット人です。彼女が幼少期の頃は、デンマークへ文化や言語を学びに行くことが義務付けられていた時代で、ドルテさんも10歳の時に親元を離れて1年間デンマークへホームステイをされていました。その後、14歳で再びデンマーク語の留学で1年間デンマークに暮らしました。16歳からの4年間は、ヌークで保育士の勉強をし、その後はデンマークの大学でグリーンランドの歴史や文学を学ばれたそうです。23歳で前夫であるデンマーク人と結婚し、娘のカミリアさんを授かりますが、グリーンランドで生活したかったドルテさんとデンマークで暮らしたい前夫と意見が食い違い離婚することになります。

イェンスさんとは、彼女がカラーリット語の教師としてグリーンランド国内を転々としている時に出会い、出会ってわずか4ヶ月で再婚したそうです。ドルテさん25歳、イェンスさん22歳の時でした。その当時は周囲の人からはすぐに別れるだろうと反対されたそうです。
ドルテさんは15年前に念願だった看護師の資格を取得し、精神科で働きはじめます。定年を迎え退職し、しばらく働いていなかったそうですが、コロナ禍を機に人手が足りない病院で再び働くことになり、現在は週に3回勤務されています。

セーリングボートで世界一周を成し遂げた夫婦


実はキルセン夫妻はグリーンランドで知らない人はいないほど有名なご夫婦なんです!これはキルセン夫婦がセーリングボートで世界一周したときに撮影されたドキュメンタリー映画のポスター。そう、彼らの趣味はセーリング!これまでに何度も長期航海をされています。1997年はカリブ海へ、2008-10年はアイスランド、フェロー諸島、デンマーク、ヨーロッパ、カリブ海へ、2017年にはイヌイットのルーツ北極圏の島々を巡りながら、世界一周され約1年半後にグリーンランドへ帰港されました。

世界一周セーリングエピソード

セーリングの旅のエピソードをたくさんお話してくれたのですが、中でも印象に残っている話が2つあります。1つ目は寄港したマレーシアに滞在中、ココナッツの実がイェンスさんの頭を直撃し、意識不明の重体となって数ヶ月病院に入院されたこと。(年間何人もの人が命を落としているそうです)
もう一つが、ハワイの真珠湾事件。真夜中にハワイに到着し、真珠湾の入江に碇泊した翌日、船内から外へ出ると銃を構えたアメリカ軍人に囲まれて真っ青になったこそうです。夜中に湾に侵入したのを見張が気づかなかったようで、突然の侵入者に米軍が警戒したようです。後の話でわかったのは、真珠湾に無許可で侵入したのは1941年の日本軍以来で、しかもその日がたまたま12月8日だったことでより米軍がナーバスになったとのことでした。

そんなユニークな彼らのもとで2週間のヌーク滞在を楽しみたいと思います。

◎グリーンランドの記念切手にもなった、冒険家植村直巳さんのグリーンランド単独行の記録