こんにちは、定住旅行家のERIKOです。グリーンランドには、魂を揺さぶられるような自然の景色があります。日中、虹色に輝く空や世界中の全てのブルーを集めたような海の色、夜に頭上を生き物のように舞うオーロラ。当たり前のようにあるこのような景色も心惹かれますが、今回はその中でも特に特別な景色を紹介したいと思います。

グリーンランドには世界遺産に登録されている場所が２箇所あります。その一つは南部のナルサルスァークにある「南グリーンランドのヴァイキングの住居跡や農地・イヌイットの遺跡」です。ヴァイキング入植時グリーンランドで唯一南グリーンランドで農耕や牧羊あった地として有名です。またその近くにあるカッシアースックには、グリーンランドを命名したエリック・ソルヴァルズソンが建てた北米大陸最古の教会があります。
そしてもう一つが、現在滞在中のイルリサットにある「イルリサット・アイスフィヨルド」です。イルリサットという名称がカラーリット語で「大きな氷山」という意味を持つほど、この街にはたくさんの氷河があります。

タイタニック号を沈めた世界最速氷河

イルリサットのアイスフィヨルドは、氷河で埋め尽くされた複雑に削られ入り組んだ入江で、センメック・グヤスルック氷河（Sermeq Kujalleq glacier）から分かれた氷山が集まってできたものです。イルリサットの氷河は1日20-35mも流動しその速さは世界最速です。流出した氷河はのちに大西洋へ流れていきます。あの有名なタイタニック号が衝突した氷河は、イルリサットから流れた氷河だと言われています。

イルリサット・アイスフィヨルドを楽しむ方法は主に3つ、海からボートに乗る方法と、沿岸部をトレッキングする方法、セスナ機での周遊です。
滞在先の家族のジョンさんは時々観光客を連れてアイスフィヨルドを案内する仕事をしていたので、私もそれに同乗させてもらいました。氷河は小さなものから、10階建てのビルに相当する30m以上もある大きな氷河もあります。いつ崩壊するかわからない氷河は大変危険なため、同じ場所に長い時間いることはできませんが、かなり間近で見ることができます。

猟やジョンさんのボートを使った仕事にほぼ毎日の同行していたため海へよく出ていましたが、鯨に遭遇しない日の方が少なかったくらい、多くの鯨を目撃しました。ちなみにイルリサットの海で見かける鯨はナガスクジラと言われる種類のものです。

もう一つアイスフィヨルドを楽しむ方法は、沿岸部のトレッキングです。ルートは全部で4つ。私は一番最長のブルーラインを歩きました。写真を撮ったり立ち止まって景色を眺めながら約4時間かけて歩きました。岩場が多く本格的な山歩きとなるので、行かれる時はトレッキングシューズを履くことをおすすめします。
私が歩いた日はちょうどデンマーク女王のマグダレナ2世がイルリサットを訪問中で、終始ヘリコプターの音がブンブンと聞こえていましたが、静寂に包まれると、氷河の動く音だけが空間に響いていました。気温はマイナス５度だったのですが、風が強く吹いていて、体感温度はマイナス10度位だったと思います。持ってきた水もあっという間に凍ってしまい、飲めなくなってしまったのがネックでした。

セスナでの遊覧飛行は旅は私が滞在した10月後半には運行が既に終わっていたのですが、カンゲルルスアークからイルリサットまでのフライトで窓から見えたイルリサットの土地の景色は本当に素晴らしいものでした。

氷河の歴史を体感できるアイスフィヨルドセンター

こちらは2021年にオープンしたばかりのアイスフィヨルドセンターです。アイスフィヨルドへのトレッキングの玄関口にもなっている建物で、デンマーク人建築家のドルテ・マンドラップ氏によって設計されました。

ここでは、イルリサットの氷河の歴史はもちろん、イヌイットの文化や温暖化による氷河への影響やそのプロジェクトなどを知ることができます。カラーリットに関する書籍の品揃えも充実していました。入館料は150DKKで、クレジットカードのみの支払いが可能です。マグダレーナ2世もこちらをご訪問されていました。

温暖化による氷河の変化

アイスフィヨルドセンターの中に年々氷河の融解速度が早まり、氷河が縮小している様子を表す地図を見たのですが、この氷河の融解により、近年さまざまな事故などが起こっています。
デンマーク気象協会の気候科学者であるルース・モットラム氏は、今年の8月1日だけでグリーンランドの氷が約120億トンも融解したと発表しましたが、仮にグリーンンランドの氷が全て溶けてしまうと、世界の海面は６〜７メートル上昇すると言われています。

私たちは身近に感じることのない氷河の融解ですが、極北に暮らす人びとにとっては毎日の変化によってより切実な問題となってきています。

◎「世界遺産」イルリサット　大迫力映像です！