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グリーンランド人の休み方

こんにちは、定住旅行家のERIKOです。日本では2019年に過去最長10日間のGWがあり、嬉しい反面、逆に何をしたらいいかわからないという意見も多く上がりました。グリーンランドでは、年間5週間の休暇が設けられており、職場にもよりますが、5月-9月を除く時期で最長3週間連続で取得することができるようです。休みの期間中、彼らにとって温暖で物価の安い南ヨーロッパなどの地域へ足を運ぶ人も多いようです。
首都ヌークの家族、キルセン夫婦の休日やバケーションの過ごし方から、グリーランド人の休み方を見てみましょう!

週末は国旗を掲げてスロースタート


グリーンランドでは日曜日に国旗を家の前に掲げる習慣があります。キルセン夫婦も週末になると、協同組合住宅の共有スペースに大きな国旗を掲揚します。グリーンランドの国旗は、氷の大地から昇る太陽が表されています。太陽を黄色ではなく赤く表現するところは日本人の感覚と似ていますね。また国旗へ愛着を持つところはデンマーク人のようです。
日曜日の朝はゆっくり朝食をとることを心がけているそうで、朝9時頃から食べ始めます。(平日は7時頃)パン、デニッシュ、卵、ヨーグルトなど普段より多いメニューが並びます。パンも焼きたてのものをベカリーに買い出しに行き、フレッシュなものを頂きます。


                       毎週のミサでは洗礼式も行われます

朝食が終わると、ヌーク市内のハンス・エゲデ教会で行われるミサに参列します。グリーンランドではデンマーク同様、キリスト教のルター派が信仰されています。ミサは一部の歌を除き全てカラーリット語で行われます。ちなみにこの教会でオルガンを演奏されていたのはグリーンランドに暮らす3人の日本人のうちの一人の女性でした。

大人しか招待されない子どもの誕生日


週末の定番行事と言っていいほど、休日はどこかの家の子どもの誕生日会が開催されます。グリーンランドでは「カフェミック」と呼ばれますが、日によっては2会場掛け持ちという日もあるほどです。私はグリーンランドに滞在中、たくさんのカフェミックに参加させてもらいました。


誕生日会場は家の場合や、広い会場を貸し切って行われることもあります。1日を通して平均約50人以上のお客さんが訪れるため、料理はブッフェ形式、ケーキの数も10個種類以上並んでいます。初めて参加した時不思議に思ったのが、どの子どもの誕生日会へ行っても、大人しか見かけないことでした。デンマークなどであれば、誕生日を迎えた子どもの友だちたちを招き一緒にお祝いをしますが、グリーンランドの誕生日会は子どもたちは招待されないのです。この習慣には、自然環境の厳しい中で生きてきたカラーリット人独自の価値観が反映されています。

「誕生日はその人を祝うというより、自分の子どもがまた1年生き延びることができたことを周囲の大人たちに感謝を伝える日であるため、子どもを支える大人たちを招待する習慣がある」というのを教えてもらいました。
また誕生日を迎えた人には、「Ukioqを生き延びた」と声をかけます。Ukioq(ウキヨック)は、“年”と“冬”という意味がある言葉です。
カフェミックでは食事をご馳走になり、雑談を終えると退室して、後にやってくる人たちに席を譲り、だらだらと長いすることは稀です。

長期休暇はセーリングへ

週末などの短い休日、ヌークの人びとは近場の山へハイキングやトレッキング、ボートで海へ出かけるなど自然の中で過ごすという話もよく聞きました。カラーリット人は普段から自然の中で生活しているのにも関わらず、休日になるとさらにどっぷり自然に浸かることを好みます。ヌーク近郊には、トレッキングに適した山々がたくさんあるので、自然が好きな人にはたまらない環境です。


              キルセン夫婦が世界一周したセーリングボート(右)今は男性が暮らしている。
さて、1週間以上の長期休暇の過ごし方は、個人差もありますが、親戚や家族の多いデンマークや、海外旅行へ行く人もいます。
キルセン夫婦のバケーションの過ごし方はズバリ、彼らの趣味であるセーリングです。彼らはセーリングボートで世界中さまざまな場所を旅しているのですが、これまでに何度となく中・長距離のセーリングを行っています。もともとはイェンスさんの趣味にドルテさんが誘われたのだそうで、ドルテさんははじめのうちは恐怖心もあり、乗り気ではなかったそうですが、何度かセーリングを繰り返すうちに海の魅力に取り憑かれるようになったそうです。
その中でも一番長い航海が2017年-19年に行った世界一周です。この旅の様子はドキュメンタリー映画になって公開されてましたが、ドルテさんの先祖イヌイットの人びとが暮らす北極圏を巡るルートを通って世界一周を成し遂げられました。


                        世界一周の旅からグリーンランドに帰港した二人
ご夫婦は長期の休みができると、セーリングボートに乗ってあちこちを旅するのが好きだそうです。ドルテさんの夢はポルネシアのイースター島へ行くことだそうで、近いうちにセーリングでその夢を実現させたいと話していました。
イェンスさんとドルテさんは夕食時などに、過去の旅の思い出を共有したり、次の長期休暇に何をしたいかを話合ったりしていました。休暇の体験がその時だけだのものでなく、彼らの日常生活にも大きく影響を与えているのだなぁと感じました。


8月から11月にかけてはカリブーハンティングの時期に当たり、イェンスさんは一人でハンティングへ出かけることもあるそうです。滞在中、イェンスさんのセーリングボートでヌークから5時間行ったところにある場所へカリブーハンティングに同行させてもらいました。
セーリングボートはアザラシ猟などで使用する小型ボートとは違い、風や天候にスピードや揺れが左右されるため、船内にいるとすぐ船酔いをしてしまいました。
随分山を歩いてカリブーを探したのですが、今回は1匹も現れることなく終わってしまいました。

ヌークへ帰るボートの甲板で見たオーロラ。この日は満月で、明るい月の光にも負けず、オーロラが絶え間なく舞い続けていました。
グリーンランド人の休暇の過ごし方は個人によってそれぞれですが、休みの日にも自然と触れ合うことが欠かせない要素であることは共通しているようです。

◎「愛と幻想のファシズム」村上龍さんの近未来政治小説。