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グリーンランドの子どもの暮らし

こんにちは、定住旅行家のERIKOです。グリーンランドでは女性の出産平均年齢は24歳と、北欧諸国と比べると3-5年早く子どもを出産する傾向があります。出生率は2.0で、2009年のピーク時の3.0と比べると年々減少傾向にあります。子どもを持つことが女性の最優先事項であるという意識が強くあり、学生生活中でも妊娠すれば学業をお休みして出産をする女性も少なくありません。また、結婚という形をとるカップルも少なく、国内で約6,500人が結婚しているのに対し、未婚者は19,000人とその差は大きくあります。さて今回はグリーンランドの首都ヌークに暮らすミキ・キルセン君を通じて、グリーンランドの子どもの暮らしなどをみていきたいと思います。

首都ヌークに暮らすミキ君

ミキ・キルセン君は現在12歳で、義務教育の7年生です。ミキはカラーリット語(グリーンランド語)で、「小さい男の子」と意味があり、末っ子の男の子によく付けられる名前です。趣味はバスケットやスノボーで、近所に暮らすおじいちゃんが作ってくれたバスケットゴールでお兄ちゃんのエリックとよく遊んでいます。幼い頃はバイオリンを習っていたそうですが、数年前からドラムに惹かれ、現在は週1回レッスンに通っています。時々コンサートも行うそうで、日々の練習に励んでいます。


お菓子作りも大好きなミキ君

ハンティングを学ぶことは生きていく糧を身につけること

カラーリットの男の子は10歳くらいになると、父親と一緒に猟へ出かけハンティングの仕方や獲物の捌きかたなどを習います。ミキ君は10歳になる前からお兄ちゃんのエリックとお父さんのアダムさんと一緒にハンティングへ出かけています。彼らの先祖であるイヌイットの人びとは、狩猟をすることで命を繋いできました。それは現代でも都会で生活する人も変わりません。


カラーリットの親は子どもが自立することを強く望み、それを助けることが親の役割だと考えます。彼らのいう「自立」とは一人で生きていけるようになること、つまり狩猟のスキルを身につけ食料を得ることがそれに当たります。そのため、ハンティングを教えることは大事な親の務めの一つであり、自立をサポートすることでもあるのです。
カラーリットの人びとが行う猟は、彼らが食料として必要な分のみを捕獲することであり、遊びや楽しみのために動物の命を奪うことは絶対にしません。自然からもらうものが、自分たちの血や肉になっていくことを彼らは体感的に幼い時期から学びます。

子どもと信仰


グリーンランドではルター派のプロテスタントが信仰されていて、教会との関係は切っても切れないものとしてあります。伝統的に0歳で幼児洗礼を受け、ミキ君位の年齢になると堅信(コンファメーション)と呼ばれる、幼児洗礼を受けた子が自分の意思で信仰を告白するという儀式があります。賢臣の日には、カラーリットの民族衣装を着て教会へ行きます。ミキ君はこの日、「自分には信仰がない」と言うことを告白しました。この賢臣は合計10回行われるため、今後も年齢を重ねていくにつれてミキくんの精神の変化が現れるかもしれません。

子どものSNS問題


今や子どもたちもスマホを一台ずつ持つような時代になりましたが、日本同様グリーンランドでも子どものSNSに関するトラブルや問題は起こっているようです。ミキ君もスナップチャットなどのアプリを使って友だちとコミュニケーションをとっていますが、オンライン上で誰から不快な言葉や悪口を言われたりした経験があるようです。
ミキ君の母親であるアーニャさんは、SNS上で問題があるとその会話などを見せてもらい、友だちとの接し方をアドバイスしているようでした。また問題が大きい場合は、トラブルになっている相手の親に連絡し、親同士で子どもたちの状況をしっかり把握することを努めているようです。ミキ君が使う携帯には、Parents lockと呼ばれる機能制限をかけ、不道徳なサイトにはアクセスできないように管理しているようでした。学校でもSNSとどう向き合うかということをディスカッションする授業もあるそうです。

学校生活

学校へは毎日徒歩で通学します。風が強い日や天候が荒れている日はバスを利用することもあるようです。授業は朝8時に始まり、昼食は学校の給食を食べます。毎日授業の数は異なりますが、長い日でも15:15には全ての授業が終了します。学校での授業は、担当する教師によって、カラーリット語とデンマーク語のいずれかが使われるそうです。グリーンランドの学校には部活やスポーツクラブなどはないため、授業が終わるとそれぞれ家に帰宅します。
グリーンランドの義務教育は9年間あり、10年生は選択制になっています。多くの子どもたちは10歳前後の年齢でデンマークへ約1年ほど語学や文化の勉強のため留学をするのだそう。ミキ君のお兄ちゃんのエリックは11歳を迎えますが、来年から1年間デンマークへホームステイする予定だそうです。

親が子に望むカラーリットとしてのアイデンティティ


                         ミキ君の家族
ミキ君の母親のアーニャさんの両親は、彼女をデンマーク語の幼稚園、学校へ進学させ、家庭でもデンマーク語で話す環境で育てました。そのため自国の言語であるカラーリット語が十分に話せません。彼女は思春期を迎えた頃に、自分のアイデンティティに大変悩んだことがあったそうです。カラーリットとして、カラーリット語を話すことは、アイデンティティを確立するためにも極めて重要だと感じ、大人になってから勉強を始めました。子どもたちにもカラーリットとしての誇りを持ってほしいと考えており、家では家族全員がカラーリット語で会話をすると決めているそうです。お父さんのアダムさんはカラーリット語がネイティブなため、アーニャさんや子どもたちはアダムさんから分からない表現などを教えてもらっているそうです。親も一緒に学ぶ姿を子どもたちに見せるのも大切だと思うと話していました。

カラーリットの桃太郎「セッスマアンナ」


最後にこちらはグリーンランドを代表する物語で、カラーリットの子どもたちが小さい頃に必ずと言っていいほど読む絵本です。「桃太郎」のグリーンランド版とも言いますでしょうか。
「セッスマアンナ」(海の女神)という本で、グリーンランドの海を司る女神神話のお話です。
海を荒らす人間たちに怒りを覚えた女神は、彼女の髪の毛にあらゆる動物たちをかき集め海底に沈んでしまい、人間たちに食料を獲れなくさせてしまいます。そこで「アガッコ」と呼ばれるシャーマンが海底にいる彼女の元へ下りて行き、彼女の髪をとかすと、たちまちキツネ、アザラシ、セイウチ、イッカクが生きかえったという話です。この話は、欲深くならず、社会の習慣を維持し、シャーマンの言葉を守らなければならいという教訓を学ぶのだそうです。

グリーンランドの神話について詳しく説明されています↓

クリスマスツリーは自分たちの手で


グリーンランドにもクリスマスがあります。12月25日はグリーンランドでは子ども日とも言われています。ミキ君の家では10年前から、クリスマスツリーを自分たちで作るようになったそうです。集めた枝を使って骨組みを作り、狩りで獲ったご馳走でもある雷鳥の羽を使ってデコレーションとします。クリスマスツリーを買うことも考えたそうですが、デンマークからの運送で生じるCO2を削減するためにも自分たちで作る選択をしたのだそうです。

◎絵だけでも楽しめる神話「海の女神 セッスマアンナ」の物語