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ジョージアの社会問題、DVの現状を視察

こんにちは!モデル・定住旅行家のERIKOです。

前回、在ジョージア日本国大使館の上原大使のインタビューでも少し触れましたが、日本は様々な国で多様な支援を行っています。私が滞在したジョージアでも、国の発展のために多くの支援協力のプロジェクトが進んでいます。今回、私はその中で日本でも大きな課題となっている、DV問題に特化した施設を訪問させてもらいました。

トビリシ郊外にあるDVシェルター(避難所)には、現在21人の女性と子どもたちが一時的な支援を受けています。2016年に始まったこのプロジェクトで、日本は施設の2階を新しくするための支援を行いました。Anti-Violence Network of Gerogiaの責任者で、この施設を運営している、ナト・シャブラカズゼさんがシェルターを案内してくださいました。

なぜこの施設の運営を始めようと思ったのでしょうか?

私は元々、女性刑務所で働いていました。もう14年前になりますが、その当時は女性の犯罪者がとても多かったのです。その現場で働きながら、「どうしてこの女性たちが捕まっているのか?本当に悪いのは彼女たちなのか?」という疑問を持ち始めたのです。そして、その女性たちが捕まる根本的理由を追求しました。そうした時に、そのほとんどが夫に頼まれてドラッグを売買していたんです。家にドラッグを持ってこなければDVを受けていたり、子供を人質に取られたりしていたことがわかったんです。そこで、その女性たちが夫の暴力からすぐに逃げられる場所があれば、彼女たちは刑務所へ入ることはないだろうと思ったのが始まりです。

また、ジョージアには政府が運営しているDVシェルターもありますが、そこには入れない軽度の被害者もこちらで保護できるようにしています。

シェルターでは、どのようなトリートメントが受けられるのでしょうか?

ここでは、カウンセラーの先生によるケアーが受けられるほか、食事も日用品も全て無料で生活には困らない環境が揃っています。また、子どもも入居できるように完備しており、障害者用のお部屋もあります。ここには最大、12ヶ月住むことができます。
また、アートセラピーなど、いろいろな方面からのケアーアプローチも行なっています。
女性がここへきている間は、夫もカウンセリングを受けるので、それによって関係が修復されて、また生活を始めからやり直す夫婦もたくさんいます。

また夫ではなく、親や子ども、兄弟からDVを受けている人たちもいて、状況は人によって様々です。どんな状況にしても、私が今までみる限りは、この施設で診療を行うことによって、女性の意識が大きく変わるということが、その人の人生や状況を好転させる一番のポイントだと感じています。

印象に残っているエピソードを教えてください

ある時、親からDVを受けていたエチオピア人の女性がいました。エスカレートすると、殺人にも発展しかねないと思い、ジョージア国内にいることが危険であると判断しました。しかし、彼女自身にお金もなく、逃げ場のない生活をしていたため、私たち職員はみんなで何ヶ月分かの給料を集めて、彼女が逃げるためのエチオピアへの航空チケットを購入し、彼女を国へ戻したことがあります。この出来事を通して、どんな状況でもあっても、諦めずに救いの手を差し伸べることで、道は開けていくと感じました。

どういった国が支援をしているのでしょう?

EUを始めとする女性の権利に対して積極的な取り組みを行っている国々が関心を持ってくれています。スエーデンのNGO、エストニア大使館、ポーランド大使館、オランダ大使館などがシェルターの支援をしてくださっていて、特にポーランドとは、スタッフ同士がお互いに国を行き来して学習交流を行っています。また、日本も大きな支援をしてくれている国の一つです。この建物の2階は部分は、日本政府の草の根無償資金援助によって完成することができました。また、前大使のご夫人は、冬用のお洋服を各方面から集めてくださり、個人的な寄付をしてくださいました。物質的なことだけでなく、心に寄り添って助けてくださり、本当に温かい支援を頂きました。

以前、日本にはトイレなどにDVの相談ができる張り紙があると聞いたことがあります。そういったアイデアは、私たちも学んでたくさん実践して行きたいと思っています。いつか、日本に研修を兼ねて行って見たいと思っています。

             鳥取県の写真集をシェルターへ寄贈させて頂きました。

施設の中は、子どもたちの元気な声が聞こえてきたり、避難者している女性たちも笑顔で挨拶を交わして、外国人の私にも、現在の生活のことなどをなんでも快く話して下さいました。そこには、避難場所というというような暗い雰囲気はなく、様々な困難な問題を抱えながらも、前向きに生きている様子をひしひしと感じました。

私が訪問中、シェルターのスタッフの皆さんは何度も「来てくれてありがとう」と言ってくださいました。その感謝の言葉の厚みは、単純に私が訪問したことだけでなく、日本が行ってきたこれまでの支援や交流が重なったゆえにあるものだと感じました。政治や国のケアーでは手が行き届かない部分を支える彼女たちの活動。それぞれの人生を救うために真摯に活動されている姿は、美しさと優しさに包まれていました。

在ジョージア日本国大使館協力